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(速報)タックスヘイブン税制の改正=海外子会社への影響は?=

  • はじめに

2016年12月に公表された税制改正大綱において、外国子会社合算税制、いわゆるタックスヘイブン税制(CFC税制)の大幅な見直しが公表されています。パナマ文書をきっかけに法人や富裕層の税逃れ対策を強化するため、海外に移した所得の課税を厳しくすることを目的にしているといわれています。

そもそもタックスヘイブン税制とは、低税率の国に所在する海外子会社に所得を移転することにより、日本における税負担を軽減することを防止するため、一定の要件に該当する海外子会社の所得について、日本企業の所得と合算して日本で課税するものです。

現行の制度では一定の法人実効税率(トリガー税率、20%)がこの税制適用の最初のハードルとして存在しています。現地における実効税率が20%未満の外国子会社(適用除外基準を満たさないもの)の所得に対してタックスヘイブン対策税制は適用されます。香港やシンガポールが適用対象となる代表的な国/地域でした。

この改正により、海外進出している企業には大きな負担が想定されます。税制大綱が公表されたタイミングですが、その概要を紹介したいと思います。

  • 税制改正の概要まずは改正の概要を見ていきます。

平成29年改正タックスヘイブン税制2

一番大きな改正ポイントは、トリガー税率による最初のハードルが廃止されることです。これまでのトリガー税率による判定では、実効税率20%以上の海外子会社の所得は一律に適用の対象外とされていました。実効税率が21%であるミクロネシアなどがタックスヘイブン税制逃れの国として知られています。しかし、トリガー税率が廃止されると、タックスヘイブン対策税制でカバーされる国が大幅に増える見通しで、企業にとっては税負担が重くなる恐れがあります。

そして、以下がタックスヘイブン税制の適用除外となる要件です。これは企業の事務負担を減らすことを目的としているそうです。

 

<適用除外>
ブラックリスト国所在法人/ペーパーカンパニー/キャッシュボックス 租税負担割合 30%以上
会社単位の合算課税制度 租税負担割合 20%以上
一定所得の部分合算課税制度 租税負担割合 20%以上(少額免除基準(2000万円以下))

 

一定所得の部分合算課税制度における、その”一定所得”の一覧表を作成しました。現行の制度においても、資産性所得という同様の制度は存在していました。しかしその対象が大きく広がっています。以下の現行の制度との比較表をご覧ください。従来の制度における資産性所得の範囲は限定的でしたが、その対象範囲が大きく広げられたので、受動的所得の有無や合算の可否を検討するための事務負担は増えることが予想されます。

 

資産性所得(現行制度) 新制度(部分課税対象金額)
債券の利子、償還差益 利子
持株割合10%未満の株式等にかかる配当 配当
なし 有価証券の貸付の対価
持株割合10%未満の株式の譲渡益、債券の譲渡益(取引所等での譲渡) 有価証券の譲渡損益
なし デリバティブ取引にかかる損益
なし 為替差損益、その他金融資産から生じる上記各種所得以外の所得
船舶・航空機の貸付の対価 有形資産の貸付の対価
工業所有権・著作権等の使用料 無形資産の使用料
なし 無形資産の譲渡損益その他資産、人件費、減価償却等の裏付けのない異常所得

 

  •  中小企業の対応策

この制度は2018年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。できればこの制度の適用を受けことは避けたいものです。弊事務所の顧問先は中小企業が中心ですので、特に中小企業に焦点を当てて、新制度開始までにすべきことをまとめました。

(1) 特定外国子会社等の適用に関する洗い直し

現行の制度では、保有割合という形式基準によってのみ判定していました。したがって契約関係や信託を活用することによって資本関係のない海外子会社は対象外でした。しかしこれからは実質的に支配していると判断されれば、本制度の対象になります。これは大きな改正です。また間接保有割合の計算方法も変更されております。従来であれば外国関係会社に該当していたものが、新制度では対象から外れるということもありえますので注意が必要です。

(2) 税負担20%から30%までの国に所在する法人の確認

現行の制度では、まずトリガー税率により20%未満の国に所在する法人だけを確認していれば問題ありませんでした。シンガポールや香港などだけを確認していればよかったわけです。しかし基本的にトリガー税率による確認が廃止されました。今後は、税負担割合が20%から30%までの国に所在している法人で、ペーパーカンパニーやキャッシュボックスとして存在しているものは、会社単位で課税されることになります。

また税負担割合にも注意です。実効税率ではありません。仮に実行税率は高い国であったとしても、各種の税優遇措置により、一時的に税負担割合が低くなっていることもあり得ます。気づかないうちに税負担割合が20%未満もしくは30%未満になっているということもあり得ます。当然ながら日本の税率は高いです。この税制の適用を受けるくらいなら、事前に日本に資金を還流させるなどのタックスプランニングをしたほうがよいかもしれません。

(3)資産性所得の確認

従来の制度における資産性所得の範囲は限定的でしたので、適用を受けるケースは少なかったかもしれませんが、部分合算適用課税の対象範囲が大きく広げられたので、受動的な所得の有無や合算の可否を検討するための事務負担は増えることが予想されます。まず適用の有無の確認、そしてもし適用を受けるのであれば、その回避策の検討を進めておくことが必要です。

(4)今後、海外に進出しようとされている方へ

タックスヘイブン税制による課税の範囲が大きく広げられています。いままではシンガポールや香港を中心とした税金が安いとして有名な国/地域だけを検討していればよかったのですが、その他の国でも思わぬ形で課税を受ける可能性が出ています。タックスヘイブン税制の適用を受けないためのスキームの策定が求められます。

 

  •  まとめ

現行の日本のタックスヘイブン税制でも、世界的に見れば非常に厳しい制度であったという印象です。今回の改正により、従来は形式基準ですんでいたところが、実体判断を求められることが多くなることが予想されます。実体判断を求められるということは潜在的な税務リスクを常に保有していることを意味します。

また事務負担を軽減するための措置として少額免除基準を引き上げるなどとありますが、業界団体に指摘されたことを考慮したというアリバイ作りみたいなところで、その効果は限定的という印象です。実際は事務作業が増大するのは間違いなさそうです。

タックスヘイブン税制が適用されることはできれば避けたいところです。そのためには平成28年4月1日から運用が適用される前に、事前のプランニングが必要だろうと考えます。またブラックリスト制度が復活しました。今後、国税庁がどの国をブラックリストとして指定するかを継続的に注視していく必要があるでしょう。


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