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オランダをアイルランドではさむと税金が安くなる(!?)

パナマ文書を契機として、タックスヘイブン経由の節税を目的としたスキームに注目が集まっています。タックスヘイブンを用いたスキームとはどのようなものなのか、そしてどのようなメリットがあるのかを紹介したいと思います。

まずは一番シンプルなケースを考えてみます。例として日本法人からタイにある子会社に100円を貸し付ける取引を考えてみます。利率は10%とします。貸付金ですから利息が発生します。利息は10円です。(あくまで例ですので源泉や租税条約は考えません)

 

仮にタイ法人に直接貸し付けた場合ですが、その利息は日本法人に支払われます。結果として日本法人の利益になりますから、その利息相当額は日本で課税されることになります。日本の実効税率は40%とすると、利益10円に対して4円の税金が日本で発生します。

キャプチャ1

次にタックスヘイブン国を介した場合を考えてみます。日本法人からタックスヘイブン国にある法人に100円を出資し、その100円をタイ法人に貸し付けたとします。利息の10円はタックスヘイブン国にある法人に支払われます。ただこの国が無税だったとすると、利息の10円に対して税金は発生しません。結果として上の例と比べると税負担が4円違うことがわかります。

キャプチャ2

日本にはCFC税制(いわゆるタックスヘイブン税制)という、このタックスヘイブン国の内部留保に対して日本で課税できる仕組みがありますので、実際にはこの通りではありません。CFC税制についてはまた別の機会に紹介したいと思います。

 

さて、これが一番シンプルなタックスヘイブンを用いた租税回避の仕組みですが、これをベースに様々なスキームが開発されています。一番有名なものがアップル社やグーグル社が採用されていたとされる、ダブリアイリッシュダッチサンドイッチスキーム (double Irish Dutch Sandwich scheme) でしょう。海外で稼いだ所得をほぼ無税でアメリカに吸い上げるためのスキームです。

キャプチャ3

まずアメリカ法人が保有している特許などの無形資産(Intangible asset)をバミューダやBVIなどのタックスヘイブン国にある法人に移します。費用分担などのケースもあるようです。そのタックスヘイブン国にある法人はアイルランドに支店を有しています。その法人とオランダ法人がライセンス契約を締結し、そのオランダ法人は別のアイルランド法人とライセンス契約を締結します。そのアイルランドにある法人が日本をはじめとするグローバル市場に対して、サービスを提供します。

 

なぜこのようなスキームを締結するかということですが、複数の理由があります。

  • 1.アイルランドは税率が低いです。
  • 2. アイルランドとオランダの間の租税条約において、ライセンス料の支払いについては源泉徴収がありません。つまり実質的に課税が発生しません。
  • 3. アイルランドは、外国法人の支店に対しては特殊な税制があり、実質的に外国法人の支店が得た所得については、アイルランドで課税がされないようです。

 

このように各国の税制や租税条約の抜け道を見つけて、それを組み合わせて、一連の取引を組み上げているわけです。その他にもスターバックス社はスイストレーディングカンパニーというスキームを用いて租税回避をしているという報道もありました。これらの話はダブルアイリッシュウイズダッチサンドイッチが話題になったときの話で、現時点(2016年)ではどうなっているかはわかりません。

 

「それではアップル社やグーグル社は日本で税金を払っていないのではないか、けしからん!」と思われるかもしれませんが、それは別の問題です。移転価格の観点から、コストプラス法などを用いて、各国で税金を支払っているのだろうと想像します。その各国で支払った税金を差し引いた利益をどのようにアメリカ本国へ還元するかという話です。あくまでこれは法人に対する税金であり、これとは別に各国で雇用を生み出しているわけですから、それら従業員に対する所得税は当然に支払っているのだろうと想像します。

 

 


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