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電子書籍が値上げ(!?)<消費税の改正>

<国境を越える電子商取引と消費税>

ITの進展などにより取引がグローバル化し、以前は発生しなかったような税金の問題が様々な形で表面化しています。グローバルな取引に対する税金の問題(BEPS;: Base Erosion and Profit Shifting)を解決するために、先進国各国は協調して税制改正を行っています。日本においても、ここ数年で国際取引に係る税制改正を多数実施しています。そして平成27年度税制改正において、国境を越える取引(特にいわゆる電子商取引)に対する消費税の改正が実施されることとなりました。

 

<国境を越える取引の原則的な取扱い>

国境を越えて、商品を販売したり役務の提供をする場合、その販売代金には0%の消費税が課税されていると考えます。これを輸出免税といいます。その結果、国内で行った仕入や経費に係る消費税について還付を受けることができます。

還付を受けることができて、海外へ販売するほうが有利なように見えますが、本当にそうなのでしょうか? 2つの例を考えてみます。

① 国内で800円(税抜)のものを仕入れて、国内で1000円(税抜)で販売する場合

② 国内で800円(税抜)のものを仕入れて、海外へ1000円(税抜)で販売する場合

 

プレゼンテーション1

①の場合は消費税の納税額が16円となり、②の場合は、消費税が64円還付されます。不公平なように見えますが、税抜の利益の額は変わりません。手許に残る現金も、ともに200円となります。販売先が国内であっても海外であっても不公平が生じないようになっています。

 

<不公平が生じる場合>

しかしながら、取引のグローバル化により、不公平な状況が生じる場合が生まれています。

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(経済産業省「平成27年度 経済産業関係 税制改正について」より抜粋)

海外からのインターネット等を通じた電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供には、現在は消費税が課税されません。一方、国内事業者からの役務の提供には消費税が課税されます。これは国境を越える役務提供の場合には、役務を提供する者の事務所の場所で課税の有無を判定するからです。同じサービスなのに、事務所が海外であれば消費税が課されず、国内であれば消費税が課税されるのです。

そこで競争環境の公平性・中立性を確保する観点から、海外からのインターネット等を通じた役務の提供に消費税を課税することとされました。

<具体的な内容>

(対象となる取引)

平成27年(2015年)10月1日以降、海外からの電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供は、その提供を受ける個人・事業者が日本の居住者の場合には、消費税が課税されるようになります。その課税の対象になる取引を「電気通信役務の提供」と言います。その対象は著作権の利用の許諾を伴うものが含まれるため、海外からの電子書籍・音楽・広告の配信のみならず、非常に幅広い取引が対象になると思われます。私もAmazonのKindleで電子書籍を出版していますが、その価格も消費税分値上げになってしまいます。

ただし著作権の譲渡又は貸付けの判定は、引き続き譲渡又は貸付けを行う事業者の事務所の所在地となっており、どこまでが「電気通信役務の提供」に該当するのかの線引きが困難になることが想定されます。

 

(課税の方法)

B to C取引とB to B取引で課税や申告の方法が異なります。

① B to C取引の場合

海外の事業者が日本で消費税の申告納税を行う必要があります。(登録国外事業者制度が新設されました)

② B to B取引の場合

役務提供を受けた日本の事業者が、その消費税を預かって、海外の事業者に成り代わって、消費税の申告納税を行います(”リバースチャージ方式”)。対象となる取引を行っている日本の事業者は、経理システムの改定が必要です。

役務の提供を受ける日本の事業者の仕訳としては以下のようになります。

(借方)仕入100 /(貸方) 買掛金 100

(借方)仮払消費税8 /(貸方)預り消費税8

また日本の事業者が海外の事業者に役務提供をしている場合には、従来であれば輸出免税取引でしたが、今後は消費税の対象外取引になる点につき注意が必要です。

 

<想定される課題>

①新しい考え方である「電気通信役務の提供」には、著作権の利用の許諾が含まれるとなっていますが、著作権の譲渡又は貸付けの判定は、引き続き譲渡又は貸付けを行う事業者の事務所の所在地となっており、どこまでが「電気通信役務の提供」に該当するのかの線引きが困難になることが想定されます。ゲームの配信やWebによるレポートの提供など、判断に迷うケースがすでに発生しています。

②海外から「電気通信役務の提供」を行う事業者は、登録国外事業者である旨を国税庁に申請する必要があります。実施まで限られた時間のなかで、国外の事業者への周知やその手続きを実施しなければなりません。

③海外の事業者から「電気通信役務の提供」を受けている日本の事業者は、新しい消費税のコードを追加するなどの経理システムを見直す必要があります。また逆に今まで海外の事業者に「電気通信役務の提供」を提供していた日本の事業者は、従来は輸出免税処理でしたが、今後は消費税対象外取引になるので注意が必要です。


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